投資を行っている方なら一度は債券投資という言葉を耳にしたことがあると思います。
株式投資よりもリスクを抑えつつ、安定した運用を目指したいときに選択肢に入ってくる投資方法です。
そんな債券投資には「利率」や「利回り」といった用語が度々登場します。
これらの意味の違いを正しく理解できていない方もいるのではないのでしょうか。
「利率」と「利回り」は大きく異なる意味を持つ言葉です。
結論から言うと、「利率」とは債券の額面金額に対する年間の利子の割合を表し、「利回り」とは投資金額に対する年間収支の割合を表します。
まずは債券投資の仕組みから理解していきましょう。
債券とは国、地方公共団体、民間企業等が資金を調達する際に発行する有価証券です。
債券は期間と額面金額に対する年利があらかじめ決められており、年に一度か半年に一度のタイミングで利子が投資家に支払われ、満期時には利子に加え元本を受け取ることができます。
例えば、期間3年で額面金額100万円に対し年利5%の債券(以下、債券Aとします)を100万円で購入したとします。
年利が5%なので1年毎に5万円の利子、または半年毎に2.5万円が支払われ、3年経った際には元本の100万円も受け取ることができるというイメージです。
また、債券は購入すると最後まで持ち続けないというわけではなく、所有期間中に売却することも可能です。
売却額は需給のバランスによって変化するため、額面金額よりも高い価格で売れることもあれば、額面金額よりも安い価格でないと売れないこともあります。
では、ここで「利率」の説明をしていきます。
冒頭で「利率」とは、債券の額面金額に対する年間の利子の割合と説明しました。
債券Aは額面金額100万円に対して年利5%のため、利率は5%となります。
このことから「利率」と「年利」はほぼ同義語であるといえます。
たとえ額面金額100万円で年利5%の債券を95万円で購入したとしても、「利率」は額面金額ベースで計算するため5%のままです。
次に「利回り」の説明をしていきます。
「利回り」は冒頭で投資金額に対する年間収支の割合と説明しました。
つまり、自分が投資した金額に対して1年あたりどの程度の利益または損失が発生したかということです。
債券Aの例を用いると、3年間持ち続けた際には投資金額100万円に対し、毎年5万円を3年間受け取ったので利益は15万円です。
この15万円を1年間あたりに平均すると5万円となります。
投資金額100万円に対して年間5万円の利益だったため、「利回り」は5%です。
この状況では「利率」も「利回り」も5%のため、意味は変わらないではないかと感じた方もいるかと思います。
しかし、額面金額と異なる価格で債券を購入したケースはどうでしょうか。
債券Aを95万円で購入し、残り期間が1年だったとします。
年利は額面金額に対する5%であるため、5万円を1年後に受け取ることができ元本100万円も同時に帰ってきます。
この時、投資金額95万円に対して収入は105万円のため、10万円の利益となります。
「利回り」は投資金額に対する利益のため、このケースだと(10万円÷95万円)×100=約10.5%が「利回り」となります。
同様に債券Aを105万円で残り期間2年の時に購入し、最後まで持ち続けたケースも考えてみましょう。
投資金額は105万円で、収入は元本100万円と利子2年分の10万円合わせて110万円です。
つまり、2年間で5万円の利益となり1年あたり2.5万円となります。
このときの「利回り」は(2.5万円÷105万円)×100=約2.4%となります。
いかがでしたでしょうか、以上の例から「利率」と「利回り」は大きく異なることが分かるかと思います。
皆さんも債券投資を行う際には「利率」と「利回り」の違いを理解して、資金管理を失敗しないように気を付けていきましょう。